ライオンやトラ、ヒョウと同じネコ科の動物でありながら、他に見ない特徴をたくさん持っている異質な存在です。
ネコ科の特徴である出し入れ自在の爪が、チーターの場合、生後10ヶ月あたりから引っ込めることが出来なくなります。これは、高速で走ることへの適応で、爪はスパイクの役割を果たします。他にも、細くしなやかな身体、小さな頭、長く筋肉質な四肢はすべて“速く走る”ことへの適応であり、これによってチーターは厳しい生存競争に打ち勝ってきました。最高時速は110kmとも言われていますが、長く走ることはできず、せいぜい20秒程が限界です。しかし、トップスピードで他に匹敵する動物はなく、地上で最も速く走ることのできる動物です。
チーターは昼行性で、狩りは日中行ないます。これはライオンなど夜行性の動物との競合を避けたための適応と考えられています。また、単独性で群れをつくらず、狩りも単独で行ないます。時間が経った肉や腐肉は食べないので、狩りを成功させることは非常に重要な意味を持ち、獲物が射程内に入った場合の成功率は50%という、食肉目の中でも抜きんでて高確率である理由も、こういった背景があるためです。しかしチーターは意外に臆病な動物で、ライオンやハイエナなどに獲物を横取りされることもしばしばです。また、忍び寄る際、獲物に気づかれてしまうとほとんど狩りは失敗に終わります。こうしたことからチーターはつねに飢えと隣りあわせで生きています。
チーターはかつてアフリカ大陸だけでなく、西部アジア周辺、インドまで広く分布していましたが、現在は西アジアの一部とサハラ砂漠以南のサバンナに散在するのみで、絶滅を危ぶまれています。生息数はすでに1万2000頭から1万5000頭程と推定されており、100年前の10分の1程にまで激減しました。毛皮目的による乱獲・密猟や、人間の生活圏拡大により生息域が狭められたことが主な原因です。近年では数の減少による近親交配の問題も深刻化しつつあり、遺伝的多様性が失われるため、伝染病などで一気に死滅してしまう恐れもあります。(2005.8) |