樹上性の大型類人猿で、東南アジアのスマトラ島とボルネオ島のみに棲息しています。単独行動のため観察が難しく、その生態は謎が多いとされていましたが、最近の研究では個体間でのゆるやかな社会形成が認められつつあり、半単独性なのではないかとも言われています。「オランウータン」とはマレー語で「森の人」という意味ということは有名ですが、いつも思慮深く考え込んでいるような様子から、別名「森の哲人」とも呼ばれています。実際、知能は非常に高く、飼育下では道具を使用する例が報告されています。
妊娠期間が類人猿中最も長く、一度の出産で一頭の子どもを生みます。子育ては、子どもが6〜7才ぐらいまで続くため、雌が生涯に生む子どもの数は3〜4頭と考えられています。母親は子育ての期間、森で生きていくための様々な術を子どもに教えます。食餌はほぼ菜食で、熱帯林に豊富な果実や葉の柔らかい部分などを食べています。また、昆虫の幼虫やアリを食べることもあります。雌雄間の体格差が大きく、成熟した雄は頬に特徴的な肉ひだが発達します。動物園などで飼育されている個体では、栄養過多のため肥満になることが多いようです。
過去の乱獲や環境破壊による個体数の減少がすさまじく、このままでは10年〜20年で絶滅すると言われています。そのため、原産地での厳重な保護対策がなされていますが、個体数減少は依然として深刻な問題です。(2004.11) |