沖縄本島北部、山原(やんばる)と呼ばれる原生林の限られた地域だけに棲息するツル目クイナ科の鳥。1971年発見され、翌年国の天然記念物に指定されました。詳しい生態については謎が多くよくわかっていません。
太く赤い特徴的な嘴で、森の中を歩き回り、枯葉などの陰に潜む虫やトカゲ、カエルなどの小動物を捕食するといわれています。鳥類では通常、飛ぶための強靱な筋肉を支える竜骨突起(りゅうこつとっき)が発達していますが、ヤンバルクイナはこの竜骨突起が退化して小さくなっており、飛ぶことはできません。その分、太くがっちりとした脚をもち、地上をすばやく移動する能力を得ました。これはかつて沖縄島にはヤンバルクイナを捕食する敏捷な肉食獣が存在しなかったため、膨大なエネルギーを要する飛翔能力を捨て、地上を移動する能力を高めることに進化の方向性を特化させたためだと考えられています。また、ヤンバルクイナは木に登る能力にも長けており、たくましい脚と鋭い爪で巧みに木に登り、夜間は樹上で休みます。
ヤンバルクイナは現在の棲息数が2000羽を下回ったといわれており、絶滅へのカウントダウンがはじまっています。原因はダム開発や林道建設などによる森林伐採や農地拡大で生息域が狭められていること、さらにかつて沖縄島に存在しなかった捕食動物を人間が持ち込んだことなどがあげられます。マングース、ノネコの問題は深刻で、もともと数の少なかったヤンバルクイナの減少にさらに追い打ちをかけています。一度野生化してしまった生き物を根絶することはたいへんむずかしく、ヤンバルクイナの保護活動は有効な手だてを得られないまま、遅々としてすすんでいないのが現状です。(2006.9) |