中米、コスタリカからパナマにかけての林床に棲息する、体色のたいへん美しいカエル。
その名のとおり皮膚に毒を有し、その毒は人間を殺傷することができるほど強力です。先住民が狩猟に使用する毒矢の矢尻にこの毒を塗っていたことからこの名がつけられました。派手な体色も捕食者に対する警告色であると考えられます。最新の研究では、ヤドクガエルは毒(プリミオトクシン)を餌であるダニから摂取し、体内で濃縮している可能性が高いことがわかってきました。
ヤドクガエルの仲間は子育てをする習性をもつことでも有名です。カエルの仲間に普通見られる「抱接」は行わず、まずオスが落ち葉の下などに放精し、その上にメスが産卵します。メスは孵化したオタマジャクシを背中にのせ、樹上のブロメリア類、アナナスなどの着性植物の葉腋の水溜まりに運びます。水溜まりの中でオタマジャクシはメスが時々産みに来る無精卵のゼラチン質を食べて成長します。
ヤドクガエルは欧州や日本などで愛好家が多いカエルですが、人工繁殖はたいへんむずかしく、自然環境を忠実に再現したビバリウム(飼育環境)を整える必要があります。また、原産国で保護されていることと、繁殖個体が流通しにくいことなどから、高値で取引されています。(2005.11) |