日本には数十種のゴキブリが棲息すると言われていますが、そのほどんどは森林などにひっそりと棲んでいます。私たちが普段目撃するのは、数少ない屋内性ゴキブリで、日本では主に、チャバネゴキブリ、ワモンゴキブリ、ヤマトゴキブリ、そしてクロゴキブリの4種類が知られています。
ワモンゴキブリは沖縄、九州など南部に見られ、関東以北ではあまり見られません(最近では温暖化の影響か、都心でもこれらの種が見られるようになってきました)。ヤマトゴキブリは日本に古来より棲息する固有種で、屋内に出現することもありますが、どちらかというと林など、屋外で見られることが多いようです。チャバネゴキブリは関東以北の比較的寒い地域に多くみられ、飲食店などではこのゴキブリによる害が問題になっています。そして本種クロゴキブリは、日本全国に分布しており、屋内で見られる黒い大きなゴキブリは本種であることが多いです。
ゴキブリは細菌などを媒介し食中毒の原因になると言われ、害虫として駆除されますが、繁殖力・生命力ともに非常に強く、また適応能力にも長けているため、薬品などで駆除しても、それらが効かない個体が出現するなどして、なかなか完全に駆逐することはできません。
さまざまなものを食べることでも知られ、紙や絵の具、糊、木材まで食べることもあります。一方、絶食にも強く、水のみで1ヶ月以上生きることができ、水すらなくなったとしても数週間は生き長らえることができます。
クロゴキブリは孵化から2〜3年かけて成虫になります。多くのゴキブリがそうであるように、クロゴキブリの雌も卵鞘(らんしょう)と呼ばれるカプセル状の筒に産卵します。通常、1卵鞘中には22〜26個の卵が入っており、活動期には3〜5日おきに産卵を繰り返します。クロゴキブリの雌の場合、産卵後、卵鞘をすぐに離してしまうため、他のゴキブリに比べ産卵の頻度が高いことが知られています。
ちなみに、「黄金虫は金持ちだ〜」のくだりで有名な童謡に登場する「コガネムシ」は、実は「ゴキブリ」のことだと言われています。ゴキブリは地方によって呼び方が様々で、この童謡の作者である野口雨情の出身地ではゴキブリのことをコガネムシと呼んでいたそうです。「金持ちだ」というのは、卵鞘が「がま口のサイフ」に見えることからきているという説もあります。(2005.4) |